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09.27.09:13

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  • 09/27/09:13

02.08.19:04

海底



前から三両目のこの車両は、暖房がかかっていないため寒い。
加えて年末だから乗車する人も少なく、車内はシンと静まりかえっていた。

足元だけがどうにも寒くて我慢できないので、つま先に力を入れたり緩めたりしてみたが、何も変わらなかった。しだいに飽きて止めた。


空は群青色。

地平線だけがオレンジ色を帯びていて、まるで熱帯魚のようだ。
遠くの街の灯りをきらきらと纏っている熱帯魚は、どこか寂しげに見えた。

街が遠いため、車窓から見ると電車は黒い海の上を走っているようだった。
どこかで見たSF映画のワンシーンのようだ。


地平線のオレンジ色も消え、いよいよ外は闇に包まれた。

黒い海の中に、電車が沈んでしまったようだ。
ガタンガタンとか、ゴウンゴウンという音しか響かない電車は、潜水艦に早変わり。

海底探索だ。


街頭でぼんやり見える車は深海魚で、踏み切りが開くのを待つ人々は海底人。

潜水艦の中に居る私は、海底調査員の一人だろう。


そしてふと正気に戻る。
馬鹿らしくなり、自分のことをフンと鼻で笑って目を閉じた。

ウトウトとしてきた頃に気付く。
到着した駅で、黒い海の中へと進む私は、海へと帰ってゆく人のフリをしていた海底人、か。



『海底(うみぞこ)』
(text 服部 YU里江)
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